第15回:地域資源とは何か調べてみました

地元の食材、美しい景色、昔から続く祭り。地域の魅力を紹介するとき、こうしたものを「地域資源」と呼ぶことがあります。

ただ、地域資源と聞くと、有名な特産品や観光名所を思い浮かべる人もいるのではないでしょうか。身近な風景や、日々の仕事の中で受け継がれてきた技術も、地域資源として考えられるのでしょうか。

第14回では、人口減少が地域の暮らしに与える影響を調べました。今回は視点を変え、地域にある資源と、その価値を支えているものについて調べてみました。

地域資源の捉え方

特産品や観光名所だけではない

農林水産省の「地域資源活用価値創出」の説明では、農林水産物だけでなく、地域の文化・歴史、森林、景観なども活用の対象として挙げられています。これらを多様な人や企業の参加によって生かし、新たな価値を生み出す取組が紹介されています(※1)。

地域資源は、食べたり買ったりできるものだけではないことが分かります。地域の歴史や、自然と人の営みがつくってきた風景にも目を向けた方が良さそうです。

そこで今回は、地域資源を「地域にある自然、文化、産業や技術など、暮らしや活動の土台になるもの」と捉えてみたいと思います(これは特定の制度の定義ではなく、今回調べた内容をもとにした整理です)。

ものの背景にある技術や営みにも目を向ける

例えば、地元の食材には、その土地の気候や水、生産する人の技術が関わっています。昔から続く祭りにも、準備する人や、演じ方を教える人がいるはずです。

目に見えるものだけを取り出すと、その価値がどのように生まれてきたのかを見落としてしまうかもしれません。

「何があるか」に加えて、「どのように生まれ、誰が受け継いできたのか」。そんな問いから見ると、地域資源をより深く理解できそうです。

地域資源を考えることは、地域の未来にもつながる

前回のコラムでは、地域の土地やサービスを維持するには、それを支える人が必要なことを調べました。地域資源についても、同じ視点が大切だと感じます。

自然や建物が残っていても、それを手入れする人がいなくなれば、今までと同じように維持することは難しくなるかもしれません。技術や文化も、次の人に伝える機会がなければ、受け継ぎにくくなるでしょう。

地域資源を考えることは、新しい商品や観光の魅力を探すことだけではなさそうです。「これからも残したいものは何か」「どのように引き継げるか」を考えることにもつながるのではないでしょうか。

具体例から、資源のつながりを見てみる

にし阿波の農業を、作物だけでなく自然や農法から見る

徳島県西部の山間部で受け継がれてきた「にし阿波の傾斜地農耕システム」について調べると、農産物の背景にあるさまざまなつながりが見えてきました。

この地域では、斜面を平らな段々畑にせず、傾斜したままの畑でソバやイモなど、多様な作物を育てています。急斜面では土が流れやすいため、草地から刈り取ったカヤを畑にすき込むなど、土を守る工夫が行われています(※2)。

カヤとは、ススキやチガヤなどを指す言葉です。刈り取ったカヤを円錐形に積み上げて乾燥させたものを「コエグロ」と呼びます。乾燥させたカヤを細かく刻んで畑に入れることで、土の流出を防ぐほか、肥料としても役立てています(※3)。

作物だけでなく、斜面、草地、カヤを使う農法がつながっています。その土地の条件に合わせた工夫も、地域資源になるのではないでしょうか。

農地を支える技術と、人の仕事がある

傾斜地で農業を続けるための工夫は、カヤの利用だけではありません。

流れ落ちた土を「サラエ」という伝統的な農具で下から上へ戻す「土上げ」も行われています。推進協議会の説明では、傾斜地に合わせた農具を、集落の鍛冶職人が作ってきたことが紹介されています(※3)。

畑を維持する農家の仕事と、それを支える道具づくり。農産物が生まれる背景には、複数の人の知識や技術があります。

畑や道具が残っているだけでなく、使い方を知り、手を動かす人の大切さを感じました。

農業と食文化、景観もつながっている

徳島県の説明では、この農耕システムが長く継承されてきたことで、山村景観や食文化、農耕に関わる伝統行事も受け継がれていることが示されています。

地域食材を使う「そば米雑炊」や「でこまわし」といった郷土料理、雨乞い踊りなどの行事も紹介されています(※2)。

この事例では、農産物、農法、道具、食文化、景観が、それぞれ別々に存在しているわけではありません。土地に合わせて暮らしてきた人々の営みの中で結び付いています。

歴史や文化を、物語でつなぐ視点もある

文化庁の「日本遺産」にも、資源のつながりに注目する考え方があります。

日本遺産は、地域の歴史的な魅力や特色を伝えるストーリーを認定し、そのストーリーに関わる有形・無形の文化財を総合的に活用する取組です。地域に点在する文化財をつなぎ、地域全体として発信することを目指しています(※4)。

一つの建物や祭りだけを見るのではなく、歴史や風土との関係を知ることで、地域の姿を理解しやすくなるのかもしれません。

ただし、地域資源を生かすために、日本遺産などの認定が必ず必要というわけではありません。ここでは、個々の資源の背景や関係を伝える方法として参考にしたいと思います。

調べてみて感じたこと

今回調べてみて、地域資源は、形あるものの名前を並べるだけでは十分に捉えられないと感じました。

にし阿波の事例でも、作物、自然環境、農法、道具、食文化がつながっています。目に見える魅力の後ろに、日々の手入れや、積み重ねられてきた工夫があることに気付かされました。

また、資源を活用することが、すべて商品化や観光利用につながる必要はないと思います。暮らしの中で使い続けることや、次の世代に伝えることにも意味があるのではないでしょうか。

地域外から関わる場合も、「これは売れそう」「観光客を呼べそう」と先に判断するのではなく、地域の人が何を大切にしているのかを聞いてみたいと思います。

魅力的な風景として眺めるだけでなく、それを維持する仕事や知恵を知ることも、地域との関わりを深める入り口になりそうです。

まとめ

地域資源について調べると、特産品や観光名所だけでなく、自然、文化、歴史、技術などにも目を向けられることが分かりました。そして、それらの価値は、地域の人の営みや、資源のつながりによって支えられています。

身近な地域や好きな地域に、これからも残ってほしいものは何でしょうか。それがどのように生まれ、受け継がれてきたのかを知ることも、地域資源を見つめ直すきっかけになりそうです。

<参考・出典>

※1【参考】
農山漁村振興交付金のうち「地域資源活用価値創出対策(旧農山漁村発イノベーション対策)」/農林水産省
「地域資源活用価値創出の推進」を参考にしました。

※2【参考】
日本農業遺産 にし阿波の傾斜地農耕システム/徳島県
農法、伝統農具、食文化、伝統行事、景観に関する説明を参考にしました。

※3【参考】
伝統と自然を守る/徳島剣山世界農業遺産推進協議会
「コエグロ」「野鍛冶が作る伝統農具」を参考にしました。

※4【参考】
日本遺産とは/文化庁・日本遺産ポータルサイト
「主旨と目的」「日本遺産事業の方向性」を参考にしました。

※本記事の内容は公開時点の情報をもとにしています。最新の情報については、各公式サイト等をご確認ください。

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