第13回:地方創生が始まった背景を調べてみました

身近なお店が閉まる。バスの本数が減る。地域の行事を支える人が少なくなる。

こうした変化を見聞きすると、その地域だけの事情なのか、それとも社会全体の変化と関係しているのか、気になることがあります。

第12回では、地域活性化と地方創生の違いと重なりについて調べました。地方創生には、人口減少などの課題に向き合う政策としての目的や仕組みがあることが分かりました。

では、なぜ地方創生は、国を挙げて取り組む政策になったのでしょうか。今回は、その始まりの背景を、当時の公式資料などから調べてみました。

地方創生が本格的に始まったのは2014年

政府が2024年にまとめた振り返りでは、2014年の「まち・ひと・しごと創生法」の施行を、地方創生の取組が本格的に始まった節目としています(※1)。

ただし、2014年より前に、地域を支える政策や活動がなかったという意味ではありません。今回は、現在につながる地方創生が、国の政策として本格化した時期に注目します。

第12回で紹介した同法は、人口減少や東京圏への人口の過度な集中に対応し、各地域で住みよい環境を確保することを目的に掲げています。地域社会、人材、働く機会を一体的に考える法律です(※2)。

この目的を読むと、地方創生の背景には、単に地域のにぎわいを増やすだけでは対応できない、社会の変化があったことがうかがえます。

背景にあった、人口減少と東京圏への集中

日本全体が人口減少の局面に入った

2015年に公表された国土交通白書では、日本の総人口は2008年の約1億2,808万人をピークに、減少傾向にあると説明しています(※3)。

人口が増えることを前提に考えてきた地域の仕事やサービスを、人が減る状況でどう支えていくか。その問いが、地域の将来を考えるうえで重要になっていました。

人口の変化には、出生数と死亡数の関係が影響します。生まれる人より亡くなる人が多い状態になると、人口は減少する方向に動きます。

さらに、年齢構成も変わります。総人口だけでなく、働く世代や子どもの人数がどう変わるかによって、地域で必要とされるサービスや、その担い手の状況も変わっていきます。

ここで紹介しているのは、地方創生が本格化した前後の状況です。当時の資料に掲載された将来人口の見通しを、現在の最新推計として読むものではありません。

人口の減り方は、地域によって異なっていた

地域の人口を考えるときには、出生・死亡に加えて、転入・転出にも目を向ける必要があります。

他の地域から来る人より、他の地域へ出ていく人が多ければ、その移動も人口を減らす方向に働きます。出生・死亡による変化と、人の移動による変化は、分けて考えると理解しやすくなります。

同じ国土交通白書では、東京圏への人口移動が再び集中する傾向も示されています。ここでいう東京圏は、東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県です(※3)。

日本全体の人口が減る一方で、人の集まる地域と、人が流出する地域がある。この二つの変化が、同時に課題となっていたのです。

なお、国内で人が移動すること自体で、日本全体の人口が減るわけではありません。全国の人口減少と、地域間の人口の偏りは、関連しながらも異なる問題として捉える必要があります。

人口の変化は、仕事や暮らしにも影響する

人口減少という言葉だけでは、生活とのつながりが見えにくいかもしれません。当時の白書を読むと、身近な場面への影響が具体的に説明されています。

例えば、商店や飲食店、医療機関などのサービスは、利用する人に支えられています。地域の人口が減ることで、こうしたサービスの維持が難しくなる可能性があります。

公共交通も同様です。通勤・通学などの利用者が減れば、路線や運行本数を維持することが難しくなるおそれがあります。一方、高齢化が進むと、自分で車を運転しない人の移動手段として、公共交通の重要性が高まります(※4)。

サービスを支える利用者が減ることと、そのサービスを必要とする人がいること。その両方を考えなければならない点が印象に残りました。

また、白書では、地域活動の担い手が減り、祭りなどの伝統行事の継続が難しくなる可能性も指摘しています。生活の不便や雇用機会の減少が、さらに人口流出につながる悪循環も懸念されていました(※4)。

もちろん、すべての地域で同じことが起きるわけではありません。人口の規模や産業、交通の状況によって、影響の現れ方は異なります。

それでも、人口の変化は人数だけの問題ではなく、仕事や日常の暮らし、地域のつながりにも関わる問題だと分かります。

仕事・人・地域を一体で考える必要があった

こうした背景に対して、当時の政府はどのような対応を考えていたのでしょうか。

2014年9月の大臣会見では、仕事づくり、住みやすいまちづくり、地域の実情に応じた少子化対策などについて、複数の府省の取組が説明されています。府省ごとに分かれた対応を見直し、地域の個性を尊重する方針も示されていました(※5)。

人口、仕事、生活環境は、それぞれ独立した問題ではありません。働く場所があるか、安心して暮らせるか、子育ての希望をかなえられるかは、地域で生活を続けることと関わっています。

そのため、産業だけ、移住だけ、子育てだけを見るのではなく、つながりのある課題として考える必要があったのだと受け止めました。

また、全国同じ方法ではなく、地域ごとの事情を尊重する考え方が、当初から示されていたことも印象に残りました。

調べてみて感じたこと

今回調べてみて、地方創生の始まりには、地域の人口が減ることへの懸念だけでなく、仕事や暮らしを支える仕組みをどう維持するかという問題があったのだと感じました。

人口の数字は、状況を知るための大切な手がかりです。ただ、数字の増減だけでは、その地域でどのような不便が生じ、何を残したいと考えているのかまでは分かりません。

お店を利用できること、移動できること、働く機会があること、地域の活動に参加できること。そうした暮らしの中身にも目を向けることで、地方創生を身近な問題として考えやすくなりそうです。

地域との関わり方を考える際も、何かを始める前に、その地域で起きている変化や、暮らす人が大切にしていることを知りたいと思います。

まとめ

地方創生は、2014年に国の政策として本格化しました。その背景には、日本全体の人口減少と東京圏への集中、そして地域の仕事や生活サービス、担い手の維持への懸念がありました。

今回の資料からは、複数の課題をまとめて考え、地域ごとの事情に応じて対応する必要性が見えてきました。

身近な地域や好きな地域では、どのような変化が起きているでしょうか。その背景を少し調べてみることも、地域の未来を考えるきっかけになりそうです。

<参考・出典>

※1【参考・出典】
地方創生10年の取組と今後の推進方向(2024年6月)/内閣官房・内閣府「地方創生ポータルサイト」
2014年の法律施行と、地方創生の取組の本格化に関する振り返りを参考にしました。

※2【参考】
まち・ひと・しごと創生法/衆議院
2014年11月28日公布。制定時の第1条に示された目的を参考にしました。

※3【参考・出典】
平成26年度国土交通白書「我が国の人口動向及び人口推計」/国土交通省
2015年公表。総人口の推移、東京圏への人口移動、東京圏の範囲を参照。当時の状況を説明する資料として使用しました。

※4【参考】
平成26年度国土交通白書「人口減少が地方のまち・生活に与える影響」/国土交通省
2015年公表。生活関連サービス、公共交通、地域活動などへの影響と、人口減少の悪循環に関する説明を参考にしました。

※5【参考】
石破内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成26年9月12日/内閣府
2014年9月12日の会見。府省を横断した対応と、地域の個性を尊重する方針を参考にしました。

※本記事の内容は公開時点の情報をもとにしています。最新の情報については、各公式サイト等をご確認ください。

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