第7回:関係人口を支える制度や支援策を調べてみました
第6回では、自治体が地域外の人とつながるために、情報発信や交流会、地域体験、活動のマッチングなどを行っていることを調べました。
では、こうした自治体や地域団体の取組を、国はどのように支えているのでしょうか。
また、地域と関わりたい人が利用できる制度には、どのようなものがあるのでしょうか。
そこで今回は、関係人口を支える国の制度や支援策について調べてみました。
関係人口を支える仕組みは一つではない
調べる前は、関係人口になるための登録制度や、個人が利用できる補助制度があるのではないかと思っていました。
しかし、実際には「関係人口になるための制度」が一つ用意されているわけではありません。
地域を繰り返し訪れるきっかけをつくる取組、地域と人をつなぐ組織への支援、二つの地域で暮らすための環境整備など、目的に応じて異なる制度や支援策があります。
また、今回取り上げる支援策には、国が個人へ直接補助するものではなく、自治体、地域団体、民間事業者などの取組を支援し、その取組を通じて個人が地域と関わるものがあります。
何度も地域に通う「第2のふるさとづくり」
観光庁では、「何度も地域に通う旅、帰る旅」という新しい旅のスタイルを広げるため、「第2のふるさとづくりプロジェクト」を進めています(※1)。
一般的な観光では、地域を訪れて観光地を巡り、そのまま帰ることも少なくありません。
第2のふるさとづくりでは、地域の人との交流や地域運営への参加などを通じて、地域と関わるきっかけをつくります。
さらに、その後も継続して地域を訪れる仕組みづくりを目指しており、来訪者と地域との関係を育てる「個人版第2のふるさとづくりモデル」に加えて、「企業と地域の関係人口化」に着目した「企業版第2のふるさとづくりモデル」も実施されています。
個人版は、来訪者が地域との交流や地域運営への参加を通じて地域と関わり、その後も継続して訪れる仕組みをつくるモデルです。
地域と人をつなぐ組織を支援する
国は、関係人口と地域をつなぐ「中間支援組織」のモデル的な取組を支援しています(※2)。
中間支援組織は、地域と関わりたい人と、地域外の人に関わってほしい地域を結びつけ、地域での活動を調整する役割を担います。人と地域を引き合わせるだけでなく、その後の関わりをより深いものへつなげていくことも期待されています。
この事業で支援の対象として示されているのは、個人ではなく、中間支援組織によるモデル的な取組です。地域と人の間に立って両者をつなぎ、継続的な関係を育てる取組を支える制度といえます。
第4回で調べた「人・場・仕組み」のうち、特に地域と人をつなぐ「人」の役割を国が後押しする取組だと考えられます。
二つの地域で暮らす「二地域居住」
地域との関係が深まり、訪問するだけでなく、一定期間滞在しながら暮らしたいと考える人もいます。
そのような関わり方の一つが「二地域居住」です。
二地域居住とは、主な生活拠点とは別の特定の地域にも生活拠点を持つ暮らし方です。
国土交通省では、住まい、なりわい、地域住民との交流など、二地域居住に必要な環境整備を進めています。関連する改正法は、2024年11月1日に施行されました(※3)。
また、地域と二地域居住者の橋渡しを担う法人の取組や、二地域居住における中長期的な課題の解決に向けた先導的な取組も支援されています。
関係人口の中でも、地域との関係が訪問や交流から暮らしに近づいた人を支える仕組みだと考えられます。
関係人口を可視化する「ふるさと住民登録制度」
現在、政府は「ふるさと住民登録制度」の創設も進めています(※4)。
住所地以外で継続的に関わっている地域を登録することで、これまで把握しにくかった関係人口の規模や、地域との関係性を可視化する仕組みです。
登録した人に地域の情報を届けたり、地域での活動につながる機会を設けたりすることで、地域の担い手確保や地域経済の活性化につなげることが想定されています。
ただし、2026年9月時点では、制度やシステムの準備が進められている段階です。すでに全国で利用できる完成済みの制度ではないため、実際に利用する場合は、開始時期や登録方法などの最新情報を確認する必要があります。
今回は制度の概要にとどめ、実際に運用が始まった後、改めて詳しく調べてみたいと思います。
制度は誰が利用するものなのか
今回調べた制度や支援策は、利用する人や団体がそれぞれ異なります。
地域と関わりたい個人が、地域の体験プログラムや交流活動に参加するもの。
自治体や地域団体が、受入環境や活動の仕組みを整えるために活用するもの。
民間事業者などが、地域と人をつなぐ取組を行うために活用するもの。
企業が研修や地域課題への取組などを通じて、地域との関係をつくるものもあります。
制度名だけを見るのではなく、誰を対象とした制度なのか、自分はどのような形で参加できるのかを確認することが大切です。
地域と関わる機会をどう探すか
地域との関わりを探すときは、国や自治体の関係人口に関するホームページ、自治体のSNS、取組を行う団体の募集情報などが手掛かりになります。
募集内容だけでなく、対象者、期間、参加費、交通費や宿泊費の負担、活動後の関わり方なども確認する必要があります。
制度によっては、個人が制度そのものへ申し込むのではなく、その制度や支援を通じて生まれた地域のプログラムや活動へ参加します。これも、今回調べて分かったことの一つです。
調べてみて感じたこと
今回調べてみて、関係人口を支える制度は、人を直接増やすためだけのものではないと感じました。
地域を訪れるきっかけをつくる。
地域と人をつなぐ人や組織を支える。
地域で過ごし、暮らすための環境を整える。
そして、地域との関係を見える形にする。
このように、地域との関係が始まり、深まり、続いていく過程を、複数の制度や支援策が支えています。
ただし、制度があるだけで地域との関係が生まれるわけではありません。
制度は出会いや活動の土台であり、実際の関係を育てるのは、地域の人と関わる人の双方なのだと思います。
気になる地域の制度や取組を探してみませんか?
気になる地域があれば、自治体や地域団体がどのような体験、交流、滞在の機会を用意しているか調べてみると、自分に合った関わり方が見つかるかもしれません。
次回は、愛媛県が行っている関係人口の取組について調べてみたいと思います。
<用語メモ>
第2のふるさとづくり
何度も地域に通い、地域の人との交流や活動への参加を通じて、その地域との継続的な関係を育てる取組。
二地域居住
主な生活拠点とは別の特定の地域にも生活拠点を持つ暮らし方。
ふるさと住民登録制度
住所地以外で継続的に関わる地域を登録し、関係人口の規模や地域との関係性を可視化するため、政府が創設を進めている仕組み。
<参考>
※1 第2のふるさとづくり/観光庁
第2のふるさとづくりの考え方、モデル実証事業、個人版・企業版の取組について確認するために参考にしました。
※2 中間支援組織の提案型モデル事業/地域未来戦略本部事務局
関係人口と地域のマッチングや、地域内の活動を調整する中間支援組織への支援について確認するために参考にしました。
※3 二地域居住の推進/国土交通省
二地域居住の考え方、関係法令、住まいやなりわい、地域住民との交流に関する環境整備について確認するために参考にしました。
※4 地方創生2.0 政策の5本柱/内閣官房
ふるさと住民登録制度の目的や、関係人口の規模と地域との関係性を可視化する仕組みについて確認するために参考にしました。
※本記事の内容は公開時点の情報をもとにしています。最新の情報については、各公式サイト等をご確認ください。

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