第4回:地域との関係を育てる「関わりしろ」と「人・場・仕組み」を調べてみました

第3回では、関係人口が地域の活動力を広げる存在になり得ることを調べました。

では、地域外の人に一度訪れてもらえば、地域との関係は続いていくのでしょうか。

イベントを開催して多くの人が集まっても、その後につながる機会がなければ、関係は一度きりで終わってしまうかもしれません。

そこで今回も、第3回で参考にした資料「最終とりまとめ~関係人口の拡大・深化と地域づくり~」から、地域との関係を育てる「関わりしろ」と、それを支える「人・場・仕組み」について調べてみました。

関係人口は「集めれば終わり」ではない

地域のイベントや体験企画に多くの人が参加すると、関係人口が増えたように感じるかもしれません。

しかし、参加者の数が多いことと、地域との継続的な関係が生まれることは同じではありません。

地域の人と会話をする。
次に参加できる活動を知る。
自分にもできそうなことを見つける。

このような接点があって初めて、一度の訪問が次の関わりにつながります。

関係人口を考えるときは、「何人集まったか」だけではなく、「どのようなつながりが残ったか」を見ることが大切なのだと思います。

「関わりしろ」とは何か

参考にした資料では、関係人口が地域にとって単なる労働力ではなく、対等な立場で地域づくりに参加する仲間であることを踏まえ、地域に「関わりしろ」をつくることが重要だとしています。

関わりしろとは、地域外の人が地域と関わり始めたり、関係を深めたりするきっかけや余地のことだと理解しました。

資料では、その関わりしろを考えるうえで、「弱さの交換」という視点が重要だと説明しています。

地域と関係人口が、それぞれ困っていることや不安に感じていることを出し合い、互いに補い合うことで、それぞれの弱さを強さに変えていくという考え方です。

最初からお互いに利益のある関係を完成させておくのではなく、一緒に活動するなかで、結果として双方に意味のある関係を育てていきます。

「ちやのきエンデューロ」に見る弱さの交換

弱さの交換によって関わりしろが生まれた事例として、資料では、佐賀県佐賀市富士町の苣木(ちやのき)地区で行われている「ちやのきエンデューロ」が紹介されています。

苣木地区では、高齢化や過疎化が進み、地域の草刈りなどの「区役」と呼ばれる集落維持活動が住民の大きな負担になっていました。

一方、マウンテンバイクの愛好家たちは、周囲に気兼ねなく走ることのできる場所を探していました。

そこで、地域の山林をマウンテンバイクで遊べる場所として使う代わりに、ライダーが地域の区役に参加する関係が生まれました。

地域にとっての「人手が足りない」という弱さと、ライダーにとっての「走る場所がない」という弱さを交換したのです。

ライダーが区役を手伝うようになったことで、以前は3日かかっていた作業が半日で終わるようになり、共同作業を通じて地域住民との信頼関係も築かれていきました。

その後、地域住民とライダーが協働して運営するマウンテンバイク大会「ちやのきエンデューロ」へと発展しました。

この取組は、地域が一方的にもてなすイベントではありません。

地域住民とライダーが共に運営し、双方に過度な負担のない、対等な助け合いの関係がつくられています。

地域の課題と外部の人の希望を結びつけることが、地域との継続的な関係につながった事例だといえます。

地域と人を結びつける「人」

関わりしろがあっても、それを地域外の人に伝え、地域との間をつなぐ人がいなければ、実際の活動には結びつきにくいかもしれません。

資料では、地域の人と関係人口を結びつける「関係案内人」や「中間支援組織」の重要性が示されています。

ちやのきエンデューロの事例でも、行政職員が関係案内人として間に入ったことで、地域住民が安心してライダーを受け入れられたと考えられています。

関係案内人には、地域外の人を紹介するだけでなく、双方の希望や事情を理解し、できることを調整する役割があります。

ただし、一人の担当者だけに頼ると負担が集中します。複数の人で役割を分担し、築いた関係を引き継げるようにすることも必要です。

人が出会い、関係を育てる「場」

地域と関係人口が出会い、交流するためには「場」も必要です。

場といっても、専用の施設を新しく造らなければならないわけではありません。

カフェ、商店、駅、地域の交流拠点など、既にある場所が、人と人が顔を合わせる「オフラインの場」になることもあります。

一方、オンラインコミュニティやオンラインイベントなど、実際の場所を持たない「オンラインの場」もあります。

オンラインで地域を知り、地域の人と交流した後、実際に現地を訪れる。
訪問後もオンラインで情報交換や交流を続ける。

このように、オンラインとオフラインを組み合わせることで、遠くに住んでいても地域との関係を始めやすく、継続しやすくなるのだと思います。

つながりを継続させる「仕組み」

人と場があっても、一度の活動だけで終われば、関係は続きにくくなります。

活動後も地域の情報を届けること、次の参加機会を案内すること、本人の関心や得意分野に合う活動を紹介することなど、つながりを継続させる仕組みが必要です。

参加の頻度や役割を固定しすぎないことも大切です。

現地を訪れる、オンラインで参加する、情報を発信するなど、複数の選択肢があれば、それぞれの生活に合った形で関係を続けられます。

「交流疲れ」を避ける、ちょうどよい距離感

地域側が訪問者を毎回お客さまとして手厚くもてなすと、受け入れる人の負担が大きくなります。

反対に、関係人口に参加や貢献を求めすぎれば、関わる側が疲れてしまいます。

今回参考にした資料では、関係人口は労働力でも観光客でもないため、日常の延長として接し、お互いに必要以上に気を遣わない距離感を探ることが求められています。

参加できない時期があっても関係を切らない。
関わり方の濃さを一つに決めない。
同じ活動を繰り返すだけでなく、内容に変化を持たせる。

それぞれが無理のない距離を選べることが、交流疲れを避け、関係を長く続けるために大切なのだと思います。

調べてみて感じたこと

今回調べてみて感じたのは、関係人口を増やすために必要なのは、参加者を募集する企画だけではないということです。

地域と関係人口が、それぞれの弱さを出し合い、補い合える関わりしろがある。

それをつなぐ人がいて、人が出会える場と、関係を続けられる仕組みがある。

こうした基盤が地域に残ることで、一度の訪問が次の関わりにつながるのだと思います。

関係人口の取組で本当に地域に残したいものは、参加者の名簿や人数ではなく、地域と人が再びつながることのできる「関わりしろ」と「人・場・仕組み」なのではないでしょうか。

あなたが関われそうな「余地」はありますか?

気になる地域に、自分の経験や得意なことを生かせそうな余地はあるでしょうか。

また、自分が困っていることを、その地域との関わりによって補える可能性はないでしょうか。

次回は、関係人口にはどのような関わり方があるのか、具体的な類型や例について調べてみたいと思います。

<用語メモ>

関わりしろ
地域外の人が地域と関わり始めたり、地域との関係を深めたりするきっかけや余地。

関係案内人
地域の人と関係人口を結びつけ、双方の希望や事情を調整しながら、地域との関わりを支える人。

中間支援組織
地域と関係人口の間に立ち、活動の調整、情報提供、関係づくりなどを支援する組織。

交流疲れ
交流を続けるなかで、受け入れる地域側や関係人口側に負担が集中し、関わりを続けることが難しくなる状態。

<参考>

最終とりまとめ~関係人口の拡大・深化と地域づくり~(令和3年3月)/国土交通省
関わりしろと弱さの交換、ちやのきエンデューロの事例、関係案内人や中間支援組織、人・場・仕組みによるつながりの支援について確認するために参考にしました。

※本記事の内容は公開時点の情報をもとにしています。最新の情報については、各公式サイト等をご確認ください。

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