第8回:愛媛県の関係人口の取組を調べてみました
第7回では、地域を繰り返し訪れる仕組みや、地域と人をつなぐ組織への支援など、関係人口を支える国の制度について調べました。
では、こうした考え方は、地域でどのような取組につながっているのでしょうか。
今回は、愛媛県の公式資料から、県外に暮らす出身者、地域と関わりたい人、県外企業を対象とした3つの代表的な取組を調べてみました。
対象に応じて異なる入口がつくられている
愛媛県の関係人口に関する取組を調べてみると、すべての人を同じ方法で地域へ呼び込んでいるわけではないことが分かりました。
県外に暮らす愛媛県出身者との関係をつくる取組。
地域外の人との交流機会と、地域側の受入体制をつくる取組。
県外企業と地域をつなぐ取組。
対象によって、地域との関係を始める入口が異なります。
移住やUIJターンを将来的な目標に含む取組もありますが、その前の段階として、まず地域を知り、訪れ、関係を続けるための機会がつくられています。
県外に暮らす出身者とつながる「ふるさと4.0」
愛媛県では、県内7市町と連携し、2024年度から2026年度まで「ふるさと4.0」という事業を実施しています(※1)。
進学や就職などで県外へ転出した人は、愛媛との関係がなくなるわけではありません。しかし、離れて暮らす期間が長くなると、地域の情報を受け取ったり、地元との接点を持ったりする機会が少なくなることも考えられます。
この事業では、出身者向けのアプリを活用した情報発信などを通じて、県外へ転出した若年層と市町との継続的な関係づくりを進めています。
また、地方での体験を希望する若者と、働き手を求める地域の事業者をつなぎ、就業や移住を一定期間体験できる機会も提供しています。
対象には愛媛県出身者だけでなく、地方での仕事や暮らしに関心を持つ若者も含まれています。
将来的なUIJターンも目標に含めながら、まずは県外に暮らす人と愛媛との接点をつくり、継続的な関係を育てようとする取組だと分かりました。
地域のファンと受入体制をつくる中予地域の取組
愛媛県内で行われている地域別の取組の一つに、中予地方局の「関係人口創出モデル事業」があります(※2)。
この事業は、新たな地域づくりの担い手として期待される関係人口を創出するため、2025年度から実施されています。
特徴的なのは、「地域のファンづくり」と「地域の受け皿づくり」という二つの方向から進めていることです。
地域のファンづくりでは、地域外から人を呼び込むイベントが行われています。まず地域を訪れ、地域の人や魅力に触れる機会をつくる取組です。
一方、地域の受け皿づくりでは、中予管内の行政職員を対象に、関係人口について考えるワークショップなどが行われています。
地域外の人を呼ぶだけでは、継続的な関係が自然に生まれるとは限りません。地域側にも、どのように迎え、どのような関わり方をつくるのかを考える機会が必要です。
この取組からは、地域外の人との接点だけでなく、関係を受け止める地域側の準備も重視されていることが分かります。
第4回で調べた「人・場・仕組み」や、第6回で調べた自治体の役割が、地域の取組として具体化されている例だと感じました。
県外企業と南予地域をつなぐワーケーション
愛媛県では、個人だけでなく、県外企業と地域との関係づくりも進めています。
2026年度には、南予地域の9市町を対象に、県外企業が行う企業合宿型ワーケーションを支援しています(※3)。
愛媛流ワーケーションでは、企業の人材育成に加えて、地域課題の解決や、企業と地域との共創による地域活性化も目的としています。
企業は、地域での体験や活動を通じて学びを得ることができます。地域にとっても、企業の人材や知識と出会い、地域の課題や可能性を一緒に考える機会になります。
さらに、一度の訪問で終わるのではなく、ワーケーションを通じて地域と県外企業との継続的な関係をつくることが目指されています。
個人の関係人口とは形が異なりますが、企業や社員が地域と関わり続ける「企業版関係人口」の入口といえそうです。
三つの取組に共通すること
今回調べた3つの取組は、対象も方法も異なります。
「ふるさと4.0」は、県外に暮らす出身者や若者と愛媛をつなぐ取組です。
中予地域のモデル事業は、地域外の人との交流機会と地域側の受入体制をつくる取組です。
南予地域の企業合宿型ワーケーションは、県外企業と地域をつなぐ取組です。
一方で、「接点をつくる」「実際の交流や活動につなげる」「継続的な関係や再訪を目指す」という流れは共通しています。
関わる人数だけでなく、関係を続けるための仕組みをつくろうとしていることが、愛媛県の取組の特徴だと感じました。
愛媛県とつながる機会をどう探すか
愛媛県との接点を探すときは、愛媛県や各地方局、市町の公式サイトが手掛かりになります。
また、県公式移住ポータルサイト「えひめ移住ネット」では、移住に関する情報に加えて、交流イベントなども紹介されています。
サイト内の「え!愛媛」には、オンラインで参加できるもの、現地で交流するもの、その両方を組み合わせたものなど、さまざまなコミュニティが掲載されています(※4)。
「関係人口」という名称が付いていなくても、交流会や地域体験、ワーケーションなどが、地域との関係を始める入口になることがあります。
調べてみて感じたこと
愛媛県の取組を調べてみて、地域との関係は、移住するか、移住しないかの二つだけではないと改めて感じました。
県外に暮らしながら出身地の情報を受け取る。
地域のイベントへ参加する。
仕事や企業の活動を通じて地域を訪れる。
こうした関わりも、地域との関係を育てる一歩になります。
移住やUIJターンを将来的な目標とする場合でも、その前に地域との接点や信頼関係をつくる段階があります。
また、愛媛県には、市町や地域を越えて人や企業をつなぎ、それぞれの地域に合った取組を支える役割があるのだと思います。
愛媛県との入口を探してみませんか?
愛媛県との関わり方は、移住だけではありません。
出身地の情報を受け取ること、交流イベントへ参加すること、仕事を通じて地域を訪れることも、関係を始める入口になります。
次回は県全体から松山市へ視点を移し、松山市が行っている関係人口の取組について調べてみたいと思います。
<用語メモ>
企業版関係人口
企業やその社員が、研修、地域課題の解決、地域との共創などを通じて、特定の地域と継続的に関わること。
愛媛流ワーケーション
愛媛県の地域資源を生かし、企業の人材育成に加えて、地域共創や地域課題の解決などを目的として行う企業合宿型のワーケーション。
<参考>
※1 「ふるさと4.0」事業概要/愛媛県(令和8年度版PDF)
県外に転出した若年層との継続的な関係づくり、情報発信、就業・移住体験、UIJターンに関する目的を確認するために参考にしました。
※2 関係人口創出モデル事業(中予)について/愛媛県中予地方局
地域のファンづくり、地域の受け皿づくり、交流イベント、行政職員向けワークショップについて確認するために参考にしました。
※3 令和8年度愛媛県南予地域ワーケーション定着促進事業費補助金について/愛媛県南予地方局
県外企業の人材育成、地域課題の解決、地域共創、地域と企業との継続的な関係づくりについて確認するために参考にしました。
※4 え!愛媛/えひめ移住ネット
愛媛県内の交流機会や、オンライン・オフラインのコミュニティ情報を確認するために参考にしました。
※本記事の内容は公開時点の情報をもとにしています。最新の情報については、各公式サイト等をご確認ください。

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