第6回:関係人口とつながる自治体の取組を調べてみました
第5回では、地域を訪れる、イベントに参加する、地域の商品を購入する、オンラインで応援するなど、関係人口のさまざまな関わり方を調べました。
地域に関心を持ち、「何か関わってみたい」と思っても、参加できる活動や相談先が分からなければ、実際の行動には移しにくいと思います。
一方、地域側にも、「どのような人に関わってほしいのか」「地域外の人とどうつながればよいのか」という悩みがあるかもしれません。
そこで今回は、自治体が地域と地域外の人をつなぐために、どのような取組を行っているのか調べてみました。
多くの自治体が関係人口の取組を行っている
内閣官房が全都道府県・全市区町村を対象に実施した令和7年度の調査では、回答した1,738団体のうち、1,436団体が令和6年度に関係人口の創出・拡大に関する取組を実施したと回答しています(※1)。
具体的な取組では、ふるさと納税を行った人との関係を深めるものが650団体、地域から都市部の住民などに向けた情報発信やコーディネートが614団体、都市部で地域とのつながりをつくるイベントや相談会などが608団体となっています。
関係人口という言葉はまだ新しい印象がありますが、すでに多くの自治体が、地域外の人とつながるための取組を行っていることが分かります。
まずは地域を知ってもらう
自治体による関係人口の取組の入口になるのが、地域の情報発信です。
観光地や特産品だけでなく、地域で暮らす人、受け継がれてきた文化、地域で始まっている活動などを伝えることで、その地域に関心を持つきっかけが生まれます。
また、地域の魅力だけでなく、担い手を必要としている活動や、一緒に考えてほしい課題を伝えることも大切です。
「この地域へ行ってみたい」という情報に加えて、「この地域なら自分も関われるかもしれない」と思える情報があれば、地域との関係は始まりやすくなります。
自治体のホームページやSNS、メールマガジンなどは、地域を知らない人に情報を届ける入口になります。
地域の人と出会う機会をつくる
情報を知るだけでなく、地域の人と実際に出会う機会も必要です。
自治体が行う取組には、都市部での交流会や相談会、現地ツアー、地域体験プログラム、オンラインイベントなどがあります。
地域を訪れ、地域の人と話すことで、ホームページだけでは分からなかった暮らしや活動を知ることができます。
都市部やオンラインで開かれるイベントなら、遠方に住んでいる人も最初の一歩を踏み出しやすくなります。
ただし、イベントを開催して参加者を集めるだけでは、一度きりの交流で終わる可能性があります。
地域の人と会話できること、次に参加できる活動が分かることなど、その後の関係につながる内容にすることが重要です。
地域の活動と人を結びつける
地域に関心を持つ人がいても、その人の希望と地域の課題が自然に結びつくとは限りません。
地域には、祭りの運営、地域資源の保全、情報発信、商品開発など、さまざまな活動があります。
一方、地域外の人にも、仕事で培った知識を生かしたい人、地域の人と交流したい人、無理のない範囲で活動を手伝いたい人など、それぞれ異なる希望があります。
こうした双方の希望を聞き、参加しやすい活動を紹介するのがマッチングです。
自治体がすべての活動を直接運営するのではなく、地域団体、企業、NPOなどと連携しながら、人と活動を結びつけることも考えられます。
一度の参加を継続的な関係につなげる
関係人口の取組では、最初の出会いをつくるだけでなく、その後の関係を支えることも大切です。
活動後に地域の情報を届ける。
次に参加できる機会を案内する。
オンラインコミュニティを通じて交流を続ける。
ふるさと納税を行った人に、寄附後も地域の活動や変化を伝える。
このような取組があれば、一度の参加や応援が次の関わりにつながります。
登録制度やファンクラブを設ける自治体もありますが、登録者数を増やすだけでは関係が深まるとは限りません。登録後にどのような情報や参加機会を届けるかまで考える必要があります。
つなぐ人や組織を支える
国土交通省の資料では、地域の人と関係人口を結ぶ「関係案内人」や「中間支援組織」が活動できる環境を整えることも、行政の役割として示されています(※2)。
具体的には、活動を始める際の初期費用や事業計画づくりの支援、行政による信頼性の確保、担い手を育成する研修などが挙げられています。
地域住民に取組を知ってもらい、地域外の人を受け入れることへの理解を得ることも必要です。
また、一人の担当者だけに関係づくりを任せるのではなく、自治体職員、地域おこし協力隊、集落支援員、地域団体などが連携し、地域内にネットワークをつくることも期待されています。
行政が前面に立ってすべてを行うというより、地域で活動する人や組織が力を発揮できるように支える役割だと理解しました。
地域によって必要な取組は異なる
関係人口の取組に、すべての自治体に共通する一つの正解があるわけではありません。
すでに多くの人が訪れている地域では、一度の訪問を継続的な関係につなげる取組が必要かもしれません。
まだ地域の認知度が低い場合は、まず地域を知ってもらう情報発信が重要になります。
地域活動の担い手を必要としている地域と、地域産業に新しい知識を取り入れたい地域でも、求める関係人口は異なります。
ほかの自治体の取組をそのまままねるのではなく、地域の現状や目的を確認し、それに合った方法を選ぶことが大切です。
人数や移住だけを成果にしない
イベントの参加者数や制度の登録者数は、取組の成果を確認する一つの目安になります。
しかし、人数が多くても、一度だけの参加で終わっていれば、継続的な関係ができたとは言い切れません。
移住者数だけを成果にすると、移住はしなくても地域を繰り返し訪れたり、離れた場所から応援したりする人の存在を捉えにくくなります。
再び地域を訪れた人、継続して活動に参加した人、地域住民と一緒に新しい活動を始めた人など、関係の変化にも目を向ける必要があるのだと思います。
調べてみて感じたこと
今回調べてみて、自治体の役割は、行政が直接「関係人口をつくる」ことではないと感じました。
地域を知る入口をつくり、人と地域が出会う機会を用意する。
双方の希望を調整し、最初の関わりを次の活動につなげる。
そして、地域で関係づくりを担う人や組織を支える。
このような環境を整えることが、自治体に期待されている役割なのだと思います。
関係人口の人数を増やすことだけでなく、地域にどのようなつながりや活動が残ったのかを見ることも大切なのではないでしょうか。
気になる自治体の取組を探してみませんか?
皆さんが気になる自治体には、地域外から参加できる活動や交流の機会、相談窓口があるでしょうか。
自治体のホームページやSNSを見てみると、自分に合った地域との関わり方が見つかるかもしれません。
次回は、関係人口の創出や地域との関わりを支える制度・支援策について調べてみたいと思います。
<用語メモ>
マッチング
地域側が必要としていることと、地域外の人の関心、経験、得意分野などを結びつけること。
<参考>
※1 令和7年度 関係人口の創出・拡大に向けた取組状況調査(概要)/内閣官房
地方公共団体における関係人口の取組の実施状況と、具体的な取組内容を確認するために参考にしました。
※2 最終とりまとめ~関係人口の拡大・深化と地域づくり~(令和3年3月)/国土交通省
関係案内人や中間支援組織への支援、地域側が活動できる環境の整備など、行政に期待される具体的な役割を確認するために参考にしました。
※本記事の内容は公開時点の情報をもとにしています。最新の情報については、各公式サイト等をご確認ください。

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